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巖谷國士さんの講演会に行ってきた。テーマは「庭園とは何かーシュルレアリスムの視点」。
(前日には恵文社で講演されたらしいけど、恵文社で巖谷氏というのは、はまりすぎです)

「庭園」と「シュルレアリスム」というと、あまり接点がないようだけど、
もともと英語のパラダイスに相当する単語の語源は「庭」に該当するようで、庭園と楽園はほぼ同義だったらしい。

「庭園」というのは、遊牧・狩猟時代あるいは民族には見られず、農耕・定住社会になってから作られるようになった。
といっても、古代の権力者がつくるものと、市井の庶民が自宅の片隅に作るものとは違うものだけど、単なる自然回帰とか、自然を閉じこめるといったものではなく、理想郷のようなイメージがあらかじめ含まれている。
というのも、遊牧・狩猟時代の生活基盤である「森」から出て(神話的には楽園から「追放」されて)、太古人間が暮らしていた(とされる)世界への郷愁が、庭園作成に向かわせた。

庭園の型式も、ヨーロッパではシンメトリーを重視したヴェルサイユ宮殿のようなフランス式に対して、
中国からイギリスに渡った非シンメトリー(自然の風景のような)のイギリス式、
中国では土地が広大なため、日本の都市ぐらいの面積の庭園もあったが、
日本の場合は土地が狭いため、凝縮に凝縮を重ね、果てに枯山水のような抽象化まで起こってしまった。

シュルレアリスムというのは基本的に、人工的・構築的な都市社会に対して、
原初的といってもいいイメージを提出するものだけど、非現実な「楽園」を現実社会に落とし込む、
という点に共通項が見られる。

というのが、今回の講演の僕の理解。

ちなみに、巖谷氏の本は河出文庫の「シュルレアリスム」をかなり前に読んでたんだけど、
今日ご本人に確認したらあの本は翻訳物だったよう(記憶違いですみません。)

ちくま文庫の巖谷氏著の「シュルレアリスムとは何か」はまた拝読いたします。

で、購入してサインを頂いた「幻想植物園 花と木の話」。表紙と挿絵は僕も好きな宇野亜喜良さん。
元々女性誌に連載されていたこともあって、上品な作りの本で、花のトリビア読むのにぴったりの雰囲気。