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アントナン・アルトー関係の著作の多い鈴木創士さんの講演に行ってきた。
「狂気?」と題された内容で芸術と狂気の関係についての話。
とはいえアルトー側の鈴木氏なので病跡学的みたいなものではなく、寧ろそういう態度を否定する立場。
氏が訳したアルトーの「ヴァン・ゴッホ」なんてゴッホ担当の精神科医がゴッホが殺した、といわんばかりの勢いだった。

僕はどちらかというと「狂気」というのを作品の付加価値にしてしまうのがあまり好きじゃない。
精神病院で死んだといえばシューマンやスメタナもそうだし、ムソルグスキーだってアル中だった。
でも曲を聴いてるときにそんなことは考えもしない。
要は「狂気」だろうがなかろうが作品がよければ良し、悪ければダメ。

なのに「狂気」を正当化したいのか、芸術家といわれる人を扱った映画ってやたらめったら主役が奇態を演じてるのが多くて食傷気味でもある。
酒飲んで暴れようが「知覚の扉」が開いてようが作品として表に出なければ「芸術」という玉の輿に乗ることはできないんである。

それでもティム・ロスがゴッホを演じたロバート・アルトマンの「ゴッホ」は面白かったと思う。

今日の講演では、時節柄アルトーの「神の裁きと訣別するため」で「神の黴菌」とされているものが放射線のこと、という下りが面白かった。
アルトーといいロートレアモンといい、こういうタイプの詩人って何かストンと腑に落ちる表現をしてくれる。

帰る前にちょっとお話しさせて頂いたんだけど、びっくりしたのが机の上に置いてあったセリーヌのレコード(!?)なんじゃそりゃ!(ディオンじゃないよ^^)
セリーヌ、シャンソンやってたらしいけど、レコードなんて初めて見た。セリーヌって本国では作品によっては刊行もままならないのに日本では全集が出てるというのが面白い。
よく日本で評価されなかったのに海外で評価されて、日本に逆輸入されるなんてケースがあるけど、逆のパターンもあるんですよね。クイーンもそうだったし。

鈴木創士さんは河出文庫のランボー全集の訳もされてる方で「今までの日本語訳で一番いいもの」とご本人がおっしゃっていたので(^^)、帰りに買って来た。
いかんせんフランス語読めない身としてはいいか悪いか判断しかねるんだけど、他のよりも読みやすいと思う。