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Masahiko Saga Weblog


「次世代電子出版とWeb 表現技術フォーラム in 京都」に行ってきた。
最近はどうしても電子書籍に目を向けないといけなくなって先日も電子書籍のセミナーに行って来たところ。
この先実用品としての電子書籍が増えてくるのは間違いないので、早めに準備しておこうと思った次第である。

最初に断っておくと、好き嫌いでいうなら僕は紙の本の方が好きである。
だけど現状、「活用」しているといえるのは圧倒的にネットが多い。
ちょっとした調べ物もアプリケーションのリファレンスも、ネットで検索かけた方が早いからだ。

本は相当数うちに転がっているけど、該当ページを探す以前に「本そのもの」を探す方が大変なくらいなので…(^^;)

更に今回のフォーラムでも繰り返され、この先も問題となるであろう、組版の問題。
一応、はじめに僕のスタンスをば。

どこまでWebあるいは電子書籍で従来の印刷物のような組版を実現させるのか。
DTPとWebと両方やってる僕としては両方の立場がわからないわけではないのだが、なぜか、一方はもう一方の立場をバカにしたがる傾向にある。
僕自身は毎回この手の議論の結論にでてくる「印刷物とWebは別」どころか、対極にあると考えている。

実際、僕はWebでは「完全固定のレイアウトは無理」と割り切ってこのブログはあえてリキッドデザインにしてある。
結果、長い一文でも改行していないため、場合によっては見にくいときもある。

そもそもiPadのニュースで何が一番感動したって、PCも携帯電話も使えないようなお年寄りが喜んで使っていた、という話だ。
こういった人のために、ユーザーが文字サイズ含めたレイアウト変更ができない作り方には否定的である。

で、今日のフォーラムである。
多分に専門的な話も多く、一介のオペレーターが追い切れるものではないのだが、先日のセミナーではPDFだったけど、今回はEPUBを前提にして、HTML5とCSS3で日本語組版の将来がテーマだったので、indesignとCSS両方いじってる当方としては非常に興味深かった。

またtwitterでハッシュタグ「#css2011jp」で検索かけるとこのフォーラムに関するまとめや議論が読めます。

もちろん最初のテーマはindesignで実現された細かい設定をどうやってCSSに実装して、EPUBできれいなレイアウトの電子書籍を制作するか、ということ。
アドビシステムズのNat McCully氏が技術的なことを説明してくれたのだが、行間開けるときの基準どこにするかとか、欧文だとベースラインだけど日本語は仮想ボディだとか、その辺の技術的に話は現場の人間としては面白かった。

大雑把には経験則としてわかってたけど、やっぱりあれだの細かい設定ができるということは、それだけアプリケーションの設計が大変だったということ。

ただ、最大の疑問は(ここではまず電子書籍ではなくブラウザで閲覧する場合の問題だけど)、これだけブラウザ間でCSS表示の差が激しいのに(特にIE!)、細かい設定をする必要があるのか、ということ。
また、現実的に可能であるのか、ということ。

それに対してはアドビシステムズのNat氏が「Webを印刷物と一緒にする必要はない」という答えとともに一言、

「We have PDF.」

そのとおりである。

それにしてもプレゼン用のスライドに「Mojikumi」とあったのはビックリした(^^/)

また「KUMIHANプロジェクト」による現行の技術による縦組みの実現。

これはjavascriptにより入力された文字に一つずつdivでくくっていくというもの。
正直、これだとスクリーンリーダーでちゃんとした文章とした読めなくなるため、Web標準の観点からはどうなのか、と思ったものの、実用品ではなく遊びであれば、すごく面白い。

カッコいい、と思ったのがこちらの「Fractal Typography」
極太明朝ならエヴァですが(^^;)戸田ツトム氏の仕事が動いてるみたいで、すごくカッコイイ!

他にもフォントの問題とかデバイスの話とか、EPUBに関してXML周辺の技術的な話も色々聞いたわけですが、僕も把握しきれてないのでonz、もう一度整理してまとめたいと思います。

最後に異体字・外字の話題だけちょこっとだけ。
Webの方からは非効率だ、と評判が悪く、DTPの現場でも頭を痛める問題だけど、僕個人としては、異体字・外字は使えるなら使えるに越したことはないと思っている。
京極夏彦氏みたいに「小説は版面だ!」とまではいわないけど、小林秀雄のランボオの訳なんて旧字体だからこその迫力というのがある。
まあ、電子の世界でそれをやる必要があるか、といえばどうかわからないが、将来的なことを見越せば、効率だけで切っていい問題ではないと思う。