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滋賀県のミホミュージアムで開催されている「若冲ワンダーランド」に行ってきた。
先月、以前作品展示をさせてもらったmizucaさんにコーヒー飲みに行った時にこの話を聞いて、これは行かねばなるまい、と思っていた。
あらかじめ、サイトで出品作品をチェックしてみたら、個人蔵の作品が多く、僕の持ってる本や図録に載っていないものばかりだった上、なんと、あのプライス・コレクションの目玉「鳥獣花木図屏風」(モザイク画のやつ)に、昨年発見されたばかりという「象と鯨図屏風」が展示される、というので、少々交通の便が悪くても関西なんだから行かない手はない、というもの。
大体、人の人生を変えてくれやがってからに、この人、全く…。

連休中ということもあって、石山駅から出るミホミュージアム行きのバス(1時間に1本)は満員。
ミュージアムに着いても、かなりの人出。ミュージアムの敷地が広いため人は分散されて、2007年の相国寺承天閣美術館での展示ほどの混雑ではなかったけど、こんなところ(失礼)まで若冲見にくるんだ、と感心していた。

「動植綵絵」のような派手なものはなかったけど、「松竹梅群鶴図」のように墨一色で描かれた作品は荒削りな筆運びも豪快で目を見張るし、エキゾチックな止まり木の鸚鵡図はなんとなく微笑ましい。
「鳥獣花木図屏風」は全く不思議な作品で、西陣織りの下絵では、という説もあるけど、用途に関係なく楽しい絵だ。
日本にいない動物ばかり。(誰だ、江戸時代の日本は鎖国のせいで外国の情報が入ってこなかった、とわめいているのは。)
西陣織にしても、何でモチーフにこのような動物群を選んだのか。
動物がいっぱい集まっている絵というと、釈迦涅槃図を思い出すけど、それとの関係はあるのか。
象や虎はともかく、豹に恐竜みたいなものまでいるんだから、升目描きの目的の他に、この絵柄にした経緯や理由にも興味が湧くというもの。。
普通なら美術館では退屈しそうな子供たちが、あれ何、モモンガ?などと話していたぐらいだから、子供のほうが面白い意見を持っているかもしれない。

そして、この展覧会のマスコット、もとい、チラシや図録にも使われている、にへら〜と笑った象が印象的な「象と鯨図屏風」。
これは元々写真は残っていたけど実物の行方がわからなくなっていたものが、昨年になって発見されたもの。
若冲の時代、象は日本に見せ物として来ていたらしいが、鯨を実際に見ることができたかは怪しいところだから、実物と比べてどうこういうのは無意味というもの。
この、どう見ても描いてる本人がにやにやしながら描いたとしか思えないデフォルメぶりが笑える。

絵の凄みや描写力なら北斎や蕭白のほうが上かもしれないけど、ぎちぎちに詰め込んだ凝縮感があって窮屈さを感じることもある。図録には蕭白の鷹の絵も掲載されているけど、見比べると若冲の鷹よりスマートで、冷たく近寄りがたい怖さがある。
その点、なんか若冲の絵って、余裕というか、おおらかな印象を受けますね。
この辺は奇人と評された前者2人との人間性の違いか。
といっても、僕は誰にも会ったことないんですがね。

会期は12月まであり、期間ごとに作品もいれ替わるため、すべての作品を見ることができなかったため、当然図録は必携。
「動植綵絵」に勝るとも劣らない作品がいっぱい掲載されているし、解説も充実しているのでじっくり読みたい。
まださわりしか読んでないれけど、なんせこのミュージアムの館長は、若冲を広めた立役者辻惟雄氏その人なんだから
下手なものができるわけがない。
また、かつては「人付き合いが苦手な内向的な絵描き」というイメージの強かった若冲だけど、最近、実務家としても手腕をふるった、という資料が発見されて新たな研究の端緒になりそうなことも書かれていて、ますます興味がつきませんね。